前回まではリズム不整の不整脈について書いてきました。今編からは房室ブロックをはじめとしたレート不整(徐脈性・頻脈性不整脈)について書いていきます。
レート不整の不整脈とは
レート不整の不整脈とは、HR(ハートレート)つまり心拍数に障害のある不整脈のことです。心房・心室それぞれの心拍には不整がありませんが、心房ー心室間で何らかの障害があり頻脈や徐脈となる不整脈です。今回は代表的な疾患の一つである房室ブロックについて書いていきます。
房室ブロックとは
房室ブロックとは、正常では洞結節より生じた電気信号が心房ー心室を通じて通るルートの間で伝導障害が発生する疾患のことです。
房室結節とは、心房と心室の間にあり心電図でいうところのPQ間となります。このPQ間が伝導障害によって延長し、心電図ではPQ間が延長して反映されます。
房室ブロックの種類
房室ブロックには何種類かあります。
- I度房室ブロック
- II度房室ブロック
- 高度房室ブロック
- III度房室ブロック
房室ブロックは病態によって重症度が異なり、下にいくにつれて重症となります。
I度房室ブロックとは
I度房室ブロックとは、PQ間が0.2秒以上延長することを指します。病態としては大きく変化するものではなく、自覚症状を伴わなず治療についても経過観察となることが殆どです。ただし、伝導障害が高度となり、他の房室ブロックに移行することに注意が必要です。
II度房室ブロックとは
II度房室ブロックは、Wenckebach型とMobitz型の2種類となります。見分け方としては、PQ間が延長しその後QRS波が脱落する(出なくなる)ものがWenckebach型、PQ間は延長せず急にQRS波が脱落する(出なくなる)ものがMobitz型です。重症度としては、Mobitz型の方が突然に脱落するのでより注意が必要となります。
基本的にはWenckebach型については経過観察となりますが、Mobitz型では徐脈によるアダムス-ストークス発作が起こるなど突然死の恐れがあるため、後述する他の房室ブロックと併せて緊急的な対処が必要となります。
高度房室ブロックとは
高度房室ブロックとは、II度とIII度の間に位置されるブロック波形となります。見方としては2:1高度房室ブロックとも記される通り、QRS波が2回に1度脱落する病態です。
前述したMobitz型より高度の徐脈となるため、こちらもアダムス-ストークス発作や徐脈による循環不全に伴う急性心不全が発症し、そのことによる突然死に注意が必要となります。早急に緊急的な対処が必要となります。
III度房室ブロックとは
III度房室ブロックとは完全房室ブロックとも言われ、文字通り洞結節から発生した伝導が房室結節でブロックされ心室に伝わらない病態です。
洞結節と心室がそれぞれ調律をしており、P波からQRS波が繋がっていません。どちらも自分のペースで調律している状態です。しかし、心臓の収縮はプルキンエ繊維まで伝導しなければ起こらないため、心室のペース(自動能)である心拍数20-40回/分で経過することが多いです。
見方としては、P波とQRS波がつながっておらずバラバラですが、P波とQRS波それぞれが等間隔の調律を保っています(ディバイダ測定でおおよそ等間隔で判断できます)。
こちらも、高度の徐脈となるため突然死に注意が必要であり、緊急的な対処が必要となります。恒久的なペースメーカの挿入や一時的なペースメーカ(テンポラリー)での処置を行います。
その他の治療や鑑別について
今までの徐脈全てに言えますが、主に抗不整脈薬が影響し(伝導を延長させて不整脈を抑える作用の薬が多いため)薬剤性に房室ブロックが発生することがあるので、薬剤性でないかの鑑別を行ってから(原因となる薬剤の中止)を行うことが基本となります。高度の徐脈を伴う際には、薬剤を止めるだけでは半減期が来ないとすぐに効果が出ません。薬の効果が切れてくるのを待っていると、突然死や心不全の増悪につながる恐れが高いため、予防的に一時的ペーシングを行なって行くことが多いです。勿論、患者さんの年齢や認知症状が保たれているか、本人や家族の希望はどうかといったバックグラウンドを経て治療方針は決定されていきます。
また、時にはβ刺激薬のツロブテロールテープを貼付することもありますが、診療的判断となるため主治医の治療方針を確認していくことが大切となります。
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